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スパイダーマン

一九七九年、
ぼくは十歳になり、
「スパイダーマン」がテレビで放映された。
東映が権利を買って作った和製スパイダーマンである。
大好きになり、欠かさず観ていた。
スパイダーマンになりたいと本気で思った。
十歳とはまだそういう年齢なのだ。
ここから糸が出てくれないかなと、真剣に手首を眺めた。
ある日、体育館で友人とスパイダーマンの話をしていると、
広々とした床が高層ビルの壁面に思えてきた。
もしや、と思い、
友人を誘って、四つん這いになり、試しにゆっくり進んでみると、
ビルをよじ登っているみたいだった。
「スパイダーマン!」
これはいい。
すごくかっこいい。
ぼくらはビルから落ちないように、慎重に手足を運び、
体育館の床を端から端まで渡った。
渡りきると、
体育の先生と、そのとりまきの高学年の女子が、
ぼくらを見て笑っていた。
なぜ笑われているのかを理解するのに、少し時間を要した。
十秒か二十秒の間、ぼくは真顔で彼女達を見つめた。
なにがそんなに可笑しいのか、考える。
その間も彼女達は笑い続けていた。
分ったとき、ぼくは目を開かれるような思いがした。
笑われていることに腹は立たなかった。
ああ、そういうことなのかと、思った。
恥ずかしさを覚え、逃げるようにその場を去った。
十歳だった。
あのとき要した時間の分、ぼくは子供だった。
ほんの数十秒だけど、
最後に本気でスパイダーマンに憧れた時間だった。

日吉

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