FC2ブログ

東海林くん

手をとると東海林くんは最初驚いていた。
けれど手を繋いで道路を渡ったほうが安全だと知ると、
今度は
力いっぱい
ぼくの手が壊れるくらいに握り締めて、
ぼくを無傷で向こう側に渡すのが自分の使命みたいに、
道路を駆け出した。

その勢いでぼくの足はほとんど地についていなかった。
向こう側に無事についても、
しばらくぼくの手を離さなかった。

それを見てクラスの連中が
冷やかすように囃し立てても
東海林くんはその手を離さなかった。
ぼくの手は壊れそうだった。

東海林くんはくるみを握りつぶしてしまうほどの怪力の持ち主だった。
ぼくの手はくるみほど頑丈ではない。
世の中には、
くるみを握り潰せる猛者がいるのだろうけれど、
東海林くんはまだ十三歳だった。

「うちの両親、
離婚するんだ」といって
東海林くんは薄ら笑いを浮かべながら、
ぼくの前にくるみを突き出して、
乾いた音を立てて、
それを握りつぶした。

ぼくが一緒に過ごしたのは中学の一年間だけだった。

二十歳の時、
夕刊で東海林くんの顔写真を見た。
見出しがついていて、
ひったくり犯を逮捕と書いてあった。
自転車で背後から近づき、
ハンドバッグをひったくる犯行を繰り返したのだ。

ぼくは高校生の時に一度、
東海林くんを見かけたことがある。
その時も彼は自転車に乗って、
悪そうな仲間と馬鹿笑いをしながら、
ぼくの前を通り過ぎていった。
五年ぶりだった。
ぼくと目が合うと、
ほんの少し眉を下げて、
それから、
気でも違ったみたいに
大口を開けて
奇声のような笑い声をあげて、
去っていった。

その笑い声が耳にまだ残っている。



ひよし









comment

管理者にだけ表示を許可する

07 | 2019/08 | 09
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール

同人誌「昴の会」発行中。興味のある方はリンクから覗いてみてね。

Author:同人誌「昴の会」発行中。興味のある方はリンクから覗いてみてね。
FC2ブログへようこそ!

筆者
ほやほや
過去のつぶやき
最新コメント
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
ブログ
36958位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
11309位
アクセスランキングを見る>>
リンク
           

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
QRコード
QR