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祖母

祖母はぼくの手を握り、
「わちのことが分かるか?」
と訊いた。
もちろん。
分かるさ。
ぼくは頷いた。
口は酸素マスクで塞がれていたし、
もし外れていても、
右足の痛みで、
口をきくことはできなかった。
熱のせいで頭が朦朧としていた。
祖母は
「わちが誰だかわかるなら、
それでいい」
といって、
病室を出て行ってしまった。

母に聴かされた話では、
祖母は、
ぼくが交通事故に遭ったことを知ると、
「頭は大丈夫なのか」と
最初にぼくの頭の心配をしたらしい。
そして、
搬送先の病院に向かう車中でも、
ずっと、
「頭が大丈夫ならなあ。
頭さえ大丈夫ならなあ」
とつぶやいていたらしい。

ぼくの足は車のバンパーとバイクの後輪に挟まれて、
骨が飛び出していたのだけれど、
そんなことは一切気にせず、
祖母は
ぼくの頭の心配ばかりしていた。

翌日、
母と一緒に現れた祖母は、
やはり、
ぼくの顔を見るなり
「わちが誰だかわかるか?」
「頭は大丈夫なのか」
と繰り返して、
ぼくがどちらの質問にも大きく頷くと、
「そうか、ならいい」
とすっかり安心して、
帰っていった。
病室を出る際、
小さな声で、
独り言のように、
「足なんかどうでもいい。
ひよしがひよしのままなら、
後は、
どうでもいい」
とつぶやいて、
小さな背を丸め、
帰っていった。

ぼくも
別に歩けなくってもいいか
と思った。

そう思ってくれる人がいるんだから、
歩けなくなっても、
いいや。

そう思って、
すこし泣いてから、
ぐっすりと眠った。


ひよし



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