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スマートフォン

この世の中で一番馬鹿にして
忌み嫌っているものが
「いきっている奴」である。

ヨサコイの期間中に
メーキャップを施した連中とすれ違う時に
よくそれを感じる。

あの目
あの立ち姿
完全にいきっとる

ああーいやだ
かっこ悪い
自己陶酔の極致だわ
と寒気がする

ナルシストほどダサイものはない
そう信じている

まだ幼少の頃なら許される余地はある
けれど
大人になってからの
自己陶酔はみっともないだけの醜態なのだ
気をつけないと命取りになる

普段温厚な人柄で通っているぼくが
我を忘れてしまうほどの憎悪を燃やしてしまう相手が
いきっている奴である

先日
携帯の機種変更をした
無料で新品に取り替えるという知らせが来たのだ
機能は一緒
ただ新しくなるだけ
でもまあ、いいか、無料なんだから。
店に行って変更手続きをして帰ってきた
そのとき
待ち時間を使って店内にあるデモ機を一台ずつ触っていった
最新型の機種の操作性の高さに目を見張った
とくにスマートフォン
ボタンを使わずに指で操作する自在性は
実際にやってみると
感動するほどかっこよかった
しびれた

その夜
夢の中でぼくはスマートフォンを手にしていた
それもみんなの目に入るように
不自然に高く掲げて
指先を大げさに動かして操作している
完全にいきっている
どうだおまえらこれがスマートフォンだぜ
見ろよ
かっこいいだろ
そう
うっとりしながらいじくっている。

実際には、
手に入らなかった
スマートフォンを手にして
目を輝かせ
口元を歪めて
純度100%で
いきっている自分の姿を目の当たりにして
ものすごくショックを受けた

そんなにスマートフォンに憧れていたなんて
夢にも思いませんでした




ひよし



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東海林くん

手をとると東海林くんは最初驚いていた。
けれど手を繋いで道路を渡ったほうが安全だと知ると、
今度は
力いっぱい
ぼくの手が壊れるくらいに握り締めて、
ぼくを無傷で向こう側に渡すのが自分の使命みたいに、
道路を駆け出した。

その勢いでぼくの足はほとんど地についていなかった。
向こう側に無事についても、
しばらくぼくの手を離さなかった。

それを見てクラスの連中が
冷やかすように囃し立てても
東海林くんはその手を離さなかった。
ぼくの手は壊れそうだった。

東海林くんはくるみを握りつぶしてしまうほどの怪力の持ち主だった。
ぼくの手はくるみほど頑丈ではない。
世の中には、
くるみを握り潰せる猛者がいるのだろうけれど、
東海林くんはまだ十三歳だった。

「うちの両親、
離婚するんだ」といって
東海林くんは薄ら笑いを浮かべながら、
ぼくの前にくるみを突き出して、
乾いた音を立てて、
それを握りつぶした。

ぼくが一緒に過ごしたのは中学の一年間だけだった。

二十歳の時、
夕刊で東海林くんの顔写真を見た。
見出しがついていて、
ひったくり犯を逮捕と書いてあった。
自転車で背後から近づき、
ハンドバッグをひったくる犯行を繰り返したのだ。

ぼくは高校生の時に一度、
東海林くんを見かけたことがある。
その時も彼は自転車に乗って、
悪そうな仲間と馬鹿笑いをしながら、
ぼくの前を通り過ぎていった。
五年ぶりだった。
ぼくと目が合うと、
ほんの少し眉を下げて、
それから、
気でも違ったみたいに
大口を開けて
奇声のような笑い声をあげて、
去っていった。

その笑い声が耳にまだ残っている。



ひよし









祖母

祖母はぼくの手を握り、
「わちのことが分かるか?」
と訊いた。
もちろん。
分かるさ。
ぼくは頷いた。
口は酸素マスクで塞がれていたし、
もし外れていても、
右足の痛みで、
口をきくことはできなかった。
熱のせいで頭が朦朧としていた。
祖母は
「わちが誰だかわかるなら、
それでいい」
といって、
病室を出て行ってしまった。

母に聴かされた話では、
祖母は、
ぼくが交通事故に遭ったことを知ると、
「頭は大丈夫なのか」と
最初にぼくの頭の心配をしたらしい。
そして、
搬送先の病院に向かう車中でも、
ずっと、
「頭が大丈夫ならなあ。
頭さえ大丈夫ならなあ」
とつぶやいていたらしい。

ぼくの足は車のバンパーとバイクの後輪に挟まれて、
骨が飛び出していたのだけれど、
そんなことは一切気にせず、
祖母は
ぼくの頭の心配ばかりしていた。

翌日、
母と一緒に現れた祖母は、
やはり、
ぼくの顔を見るなり
「わちが誰だかわかるか?」
「頭は大丈夫なのか」
と繰り返して、
ぼくがどちらの質問にも大きく頷くと、
「そうか、ならいい」
とすっかり安心して、
帰っていった。
病室を出る際、
小さな声で、
独り言のように、
「足なんかどうでもいい。
ひよしがひよしのままなら、
後は、
どうでもいい」
とつぶやいて、
小さな背を丸め、
帰っていった。

ぼくも
別に歩けなくってもいいか
と思った。

そう思ってくれる人がいるんだから、
歩けなくなっても、
いいや。

そう思って、
すこし泣いてから、
ぐっすりと眠った。


ひよし



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同人誌「昴の会」発行中。興味のある方はリンクから覗いてみてね。

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