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双子

枕元に
小さな女の子が二人
立ったことがある。

金縛りにかかり、
じたばたしていると、
誰かが顔を近づける気配を感じた。

目が開かないので、
当然、
気配でしか察することはできないのだが、
誰か
部屋の中にいるらしい
しかも二人

会話から、
およその見当をつけた

双子の
まだ幼い
女の子のようだ

右の子が
「ねえ」
と口を開いた。
「なあに」
と左の子が応じる。

「この人、寝てると思う?」
と右が訊く。

ぼくが寝ているのかが気になるようだ

「寝てるんじゃない?」
と左が言う。

もちろんぼくは金縛り中だったので、
ぱっちり起きていたのだが、
彼女達から見れば、
ぼくは
目を閉じて、
寝顔を晒しているので、
判断がつかないのかもしれない

すると右の子が
「本当に眠っていると思う?」
と笑いを含みながら問うた。
大人びた声だった。

「まさか、起きてるわけないじゃない」
と左の子が返す。
大人の女性の会話を聞いているようだった。
「それじゃあ、確かめてみようか」
と右の子は言って
左の子と一緒に
「せーの」
でぼくの顔を覗き込んだ。

ぼくは必死に寝てるふりをして
二人がいなくなるのを待った

寝てるふりをしているうちに
ぼくは本当に寝入ってしまい
目を覚ますと
朝になっていた



ひよし







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みうらじゅん

みうらじゅん
といっても
あの、ご本人ではなく、
ぼくが勝手に命名し、
そう呼んでいた男の話である。

彼は琴似のA店をネグラにするパチプロだった。

中肉中背で、
色白の顔に、
長髪と眼鏡。
ぼくはこっそり「みうらじゅん」とあだ名をつけた。

釘を読めるようになったぼくが、
足繁く通い始めた時期に、
みうらじゅんは、
すでにA店の中で、
一目置かれる存在として、
店からも客からも認められていた。

A店は昔の商店街に見かけるような小規模なホールで、
羽根物や一般電役、現金機などを
長く大事に扱う
地域密着型のパチンコ屋だった。

みうらじゅんは、
いつも
いかなる状況でも、
ドル箱を積み、
淡々とした風情で、
台の前に坐っている。
けれど、
性格は穏やかで、
気さくで、
常連のおばちゃんに話しかけられると、
茶色い歯を覗かせて、
世間話にもつきあう。

羽根物からCR機まで、
なんでもござれだった。

ぼくはよく、
彼が打ち終わった後の台を覗きに行った。
そして、
どうしてその台を選んだのかを、
自分の目で探ろうとした。
けれど、
さっぱり分からなかった。
ぼくの目では、
彼が見つけたものを、
見つけることは出来なかった。
それは
ぼくがパチンコを断つ日まで変わらなかった。
いっぱしの釘読み屋として自負していたけれど、
みうらじゅんのそれとは、
雲泥の差があった。
所詮ぼくは兼業の半プロで、
彼はそれを生業にした専業のパチプロなのだ。

先日、
久しぶりにA店を訪れた。
経営方針が変わり、
店のラインナップも様変わりしていた。
どの台に目を合わせても、
とても打てる代物ではない。
ぼくはそのまま店を出て、
しばらく町をさまよった。

どぶ川になれ果てた川からは魚の姿が消えるように、
もうA店には、
プロの影すら見つけることはできなかった。

ぼくは札幌駅のとあるホールを覗いた。
そこに足を踏み入れるのも
数年ぶりである。

ひとりの男が、
閑散とした薄暗いホールの中で、
釘を読んでいた。
ぼくはその男の釘を読んでいる姿に見覚えがあった。
いや、
憧れのまなざしで見ていた対象なのだ。
彼の姿は、
目に焼きついている。
忘れるわけがない。

みうらじゅんだった。



ひよし



おみやげ

恵庭のおばあちゃんから、
「おまえにおみやげを買ってきた。
楽しみに待ってなさい」
と電話口で言われたので、
思い込みの激しかったぼくは、
受話器を置くなり、
「やった。
ボルテスファイブの超合金だ。
やった。やった。
どうしておばあちゃん分かったんだろ?
ぼくが欲しがってたの。
やった。とにかくやった。やった。やった」
とその場で舞い上がってしまった。
当然のことながら、
恵庭のおばあちゃんは、
会話中、
ボルテスファィブの「ボ」の字も口にしなかった。
「おみやげ」と言っただけである。
0を100にした、
ぼくの、
完全なる思い込みである。

翌日、
急いで学校から戻ると、
恵庭のおばあちゃんが茶の間にいて、
「おお、
元気そうだ。
はい、
おみやげ」
と渡してくれたのは、
こけしだった。

登別のこけし、
である。

勝手に超合金だと思い込み、
気が狂わんばかりに、
「ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ」
と絶賛ボルテスファィブ中だったぼくは、
ショックのあまり、
おいおいと声をあげて、
泣き出してしまった。

突然の出来事に、
戸惑う家族の横で、
普段のぼくのことを何も知らない、
恵庭のおばあちゃんが、
もらい泣きを始めた。
「そんなに喜んでもらえるなら、
もっと大きいのを買ってきてあげたのに」
おばあちゃんも、
完全に思い込んでいるのだが、
目の前で孫が泣いているので、
可能性は0ではない。
50はある。

こけしを手にして泣いているぼくの思い込みは、
0だ。
おばあちゃんはボルテスファィブのことなんて、
何にも知らないからだ。
もしも、
仮に知ってたとしても、
温泉の土産屋にボルテスファィブが売っているわけがない。

そのためか、
トラウマなのか、
以来、
こけしに対する興味が0である。



ひよし

ねずみ

母子ともども「ねずみ」が嫌いで、
一時、借りていた家には、
頻繁に出たので、
毎日恐々として過ごした。

現れると、
父の出番である。
人間に必要なデリカシーの不足している父は、
ゴルフクラブを手に
嬉々として追い回し、
パキーンと一撃をくれて、
まるで300ヤードドライブを放ったジャンボ尾崎のような面持ちで、
茶の間に戻ってくる。
「ど、どうでした?」と母。
「ん?何だ?」と父。
「なんだじゃありませんよ。あの、その、言わせないでください。
どうしたんですか?」
「ん?ねずみか?」
キャーと母の甲高い悲鳴。
「いやですよ。どうしてその名前を」
「ばかやろう。名前ぐらいでいちいち騒ぐ奴があるか」
「いやなものは、いやなんですよ」
「あんなもの、どうってことないぞ」
「ということは、退治してくれたんですね?」
「ふん。表玄関を見てみろ」
「え?」
「後で捨てておけ」
「何言ってるんですか。そんなのあたしに触れるわけないじゃないですか」
「うるさい。後は適当にしろ」
どうやら父はどSらしい。
母をいじめるのが好きなのだ。
好きな子をいじめて、
ぞくぞくしてるのだ。

そんなくだらないやり取りが行われている間に、
外ではえらいことが起きていて、
うっかり外に出たぼくが、
それを目の当たりにすることになる。
近所に住む子供たちが集まって、
人垣ができている。
なんだろ?
と思って隙間から覗いてみると、
くたっとなったねずみの死体を、
野良猫がむしゃむしゃと食べている。
ぼくが目にしたのは、
まさにねずみの頭がバキバキと猫の口の中で噛み砕かれる瞬間だった。
キャーと母そっくりの甲高い悲鳴。
まだ声変わりしてなかったから、
まったく一緒。
どよめく子供たち。
「気持ちわりぃー」と叫ぶ子、
中には吐き気を催し、
えづいている子もいる。
猫は我関せず、
クールにカルシウムを摂取。
ぼくは悪夢を見ているような気分になって、
くらくらとめまいがしてきた。

そこではっきり分かったことは、
生きているなにより、
死んで、
食べられているなにのほうが、
より一層不気味で、
グロテスクで、
怖いということである。

ああ、後味の悪い話。


ひよし






透視

友人から透視された経験がある。
二十二歳くらいの頃だ。
昔の話で、記憶も曖昧だが、
とにかく会いたいから街に出てきてくれ
という電話があり、
ぼくはそれを面倒くさく感じて、
断ろうと思った。
すると、
友人が先手を打って、
「断れないよ」というのだ。
まるでぼくの心の中を見透かしたような口調である。
友人はこう続けた。
「おまえは今日俺に会うことになっているんだから、
断れないよ。
おまえは出てくる。
そして俺たちは会う。
これは変えられない。
決まっていることだから」

これはまた随分と強気な発言、
いったいその自信はどこから来るの?
「俺には見えるんだ」という。
こいつしばらく会わないうちに、
相当いかれてきたな。
「信じてないみたいだから、
いまのお前の姿を当ててやるよ」
ほう。
やってみてくれ。
「どうぞ」とぼくは言った。
ぼくはその時、
麦わら帽に、
ボーダーのTシャツ、
茶色のズボン、
といういでたちだった。

それを当てた。

「なんで分かるの?」
「だから、見えてるんだって」
「今も?」
「そう」
「テレビ中継みたいに?」
「いや、イメージが浮かぶんだ」
「すげえ」といってぼくは会いに行った。

会うと友人はひどく丁寧で、
腰が低く、
威圧的なところもない。
電話で与えた雰囲気とはまるで別人である。

友人の案内でバーに入り、
カウンターで酒を飲んで、
色々と話をした。
とりとめのない話の最後に、
友人は、
「おまえは三十歳になったら、
車を運転して、
林道に入り、
そこで停車して、
トマトを齧る」
と予言した。

それはまったく外れた。

なぜ電話のときにだけ、
透視能力を発揮して、
服装をばっちり当てることができたのか?
さっぱり分からない。

五年ぶりの再会だったのだが、
何のためだったのか、
いったいどんな用件だったのか、
あれから何度も思い返しているけれど、
さっぱり分からない。



ひよし





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