FC2ブログ

魔法

父と釣りに行くとき
ぼくは妻のような顔をして
助手席に坐る

出掛けに母から告げられる
「頼むわね」
の一言で魔法がかかるのだ

かいがいしく父の世話をして
父が機嫌よく過ごせるように
気配りを尽くすのである。

運転しながら食事を取るのが好きな父には

はいお茶
はいおにぎり
はいお新香
はい手ぬぐい
はい食後のコーヒー

完璧にもてなす

毎日
父の世話をする母の姿を観察していたから
どうすればいいか
よくわかっている

父の反応に合わせるだけなので
なにも難しいことなんかない

しかし父に言わせれば
ぼくが一番気が利くそうである
母は間が悪いし
姉はまったく役にたたない
らしい

確かにぼくはよく気がつく
しかしそれは
母からかけられた魔法のせいなのだ
「父さんを頼むわね」
父さんは単純だから
相手をするのは簡単だ

ぼくの満点のサービスは
たまに
妻を通り越して
母のようになっていることもある

そんな時
父の無邪気な笑顔を見るのが
つらくなる

なにもかもがつらくなり
車から飛び降りたくなる
けれど
「父さんを頼むわね」
母の魔法がドアをロックしているから
家に着くまで
ぼくはここから逃げ出せない

いつまでこんなことが続くのかしら
そう思っていた






日吉

スポンサーサイト



競馬喫茶

狸小路のそばをうろうろしていた。
JRAの場外馬券売り場WINSを捜していたのである。
メインレースが始まる時間だったので、
テレビでレースを観戦したいと思っていたのだ。
しかしWINSの場所がわからなくなって、
迷っていると、
目の前に
「競馬中継やってます」と書かれた看板があった。
肌寒い時期なのにドアを開け放ち、
競馬番組の音声を通りまで響かせていた。
いつものぼくなら後ろ髪をひかれつつ通り過ぎるところだが、
入ってみようと思った。
かねてから興味をひかれる怪しい店が沢山あったのだが、
なんとなく尻込みしてしまい、
ドアを開けて中に入る覚悟をもてなかった。
それじゃあつまらないと、
思ったのだ。
嫌な思い、
怖い思いをするのも、
面白いことだと思ったのである。

いい機会だと思って入った。
中は昭和な顔をしたおじさんたちで一杯だった。
ぼくだっておじさんなんだけれど、
彼らに比べたらまだ幼さが残り、
頼りなく映るだろう。
カウンターの端に座り、
コーヒーを頼んだ。
450円でこんなに不味いコーヒーを飲んだのは初めてである。
レースは荒れて、
ぼくを含めて全員が外したようだった。
席を立つタイミングを計っていると、
みんな、
次のレースの予想に取り掛かっている。
空気を余計に動かさないようにそぉーっとレジに向かう。
金を払い、外に出た。
しばらく口の中からコーヒーの酸味と苦味が消えなかった。
本当に不味いコーヒーだった。
また世話になるぜ。



日吉

若者たちの神々


1985年ごろ
「若者たちの神々」という単行本があった。
浅田彰
糸井重里
坂本龍一
ビートたけし
森田芳光
など錚々たる面子が紙面を飾った。
筑紫哲也がインタビュワーだった。

当時十六歳だったぼくは、
彼らを神のように崇め、
信仰した。

彼らのようになれば、
自分が救われると思った。
そう信じていた。

信じて暮らしている間、
とても幸せだった。

なにも怖くなかった。

彼らは永遠に輝き続けると思っていた。
まさか
暗黒の世界が訪れるなんて思ってもみなかったのだ。

神々が失墜していくのを
ぼくは絶望しながら見つめた
自分の信じていた未来が
粉々に砕け散るのを感じた

神を失ったぼくは
背を丸め
部屋にひきこもった

立川談志が
「ファンになったら追い続けろ。
そいつのいい時も、
悪い時も、
全部ひっくるめて見届けろ」
というようなことを発言していた。

こういうことだったんですね
談志師匠
大変勉強になりました


日吉









クロマティ治療

レーザーという名前がいけない
むやみに怖がらせているではないか
なんのためだ

実際は集団写真のフラッシュのような
やや大きめの黄色の光が
バシュバシュと
目の前でたかれて終わりである
そんなの
安全に決まっているではないか

レーザー治療と呼ばれるのだから
てっきりピアノ線のようにきりきりに絞られたレーザー光線が
患部を一直線に貫くものと思い
その場合
レーザーであるから
なにかのはずみで
強くなり
後頭部をつき抜けることもあるだろう
そして
背後に立つ看護婦の腹を抜け
壁に穴を開けることも止むを得ない
レーザーなのだから
そう
ある程度の覚悟を決めていたのだが

あれではレーザー詐欺ではないか
イチローではなく
クロマティほどであった

レーザー(二塁から還れるくらいの)治療
と表記すべきだ

なんていうくらい
痛くなかったです
本当です



日吉






レーザービーム

来週の火曜日
目の治療をする
右目の網膜にレーザーを当てる

中心性網膜症
という病気だ
目の中のフィルムの役目をする部分に
水がたまってしまい
像を歪めるので
頭がくらくらしてくる

「原因はストレス」
とのことだけれど
思い当たるのは
執筆活動くらい

たしかに執筆中はうんうん唸ってばかりで
毎晩枕を寝汗で濡らすほどのストレスを抱える

それもこれも
ぼくの作風が純文学だからではないだろうか

とすると
純文学から路線変更することも検討せねば

将来、純文学作家になれたとしても

売れないわ
寝汗かくは
そのせいで
目に水たまるわ
じゃ

体がもたん

ということで
火曜日
レーザーかけてきます

怖い



日吉

*長い間更新してなかったのは
色々と考えることがあり
たくさん本を読んでいたからです
で、
自分なりに出した結論は、
日本人でよかったな
ということでした
中身についてはおいおい書いていきます







10 | 2010/11 | 12
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
プロフィール

同人誌「昴の会」発行中。興味のある方はリンクから覗いてみてね。

Author:同人誌「昴の会」発行中。興味のある方はリンクから覗いてみてね。
FC2ブログへようこそ!

筆者
ほやほや
過去のつぶやき
最新コメント
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
ブログ
33723位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
9271位
アクセスランキングを見る>>
リンク
           

FC2Blog Ranking

RSSリンクの表示
QRコード
QR