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ジュース一本

これはいい手だ。
元手がかからないし、
一見、
気前の良さそうな人物にも見える。
実際は買いだめて置いた物を放出するだけなので、
こちらの腹がまったく痛まない。

何の話かというと、
「業者さんに渡すジュース」の件だ。

この頃
ボロアパートがとうとうボロを出して、
いろんな備品がどんどん故障するという
悲しいフェアが続いた。
そのたびに管理人に電話して
業者の方を呼んでもらったのだが、
帰り際にさっとジュースを渡すという行為を試してみたところ、
予想以上に喜ばれたのだ。
「先日はありがとうございました。
排水の方は問題ありませんか?
また何かあったらすぐに駆けつけますので、
どうぞご遠慮なく」
などという電話が
パチンコの余り玉で貰った「マリンちゃん煎餅」一枚と、
コーラ一本で掛かってくるのだ。
夜中でも電話一本で飛んできそうな鼻息なのである。

「まじ?そんなに効果覿面なの?」

その後、
ボイラー屋
ボイラーのメーカーの人
水道屋
水道屋の見習いの生意気そうなヤンキー
などにも
試してみたが、
結果は一緒だった。

みんな、
ぼくの為なら
上司と喧嘩をしてでも駆けつけてくれそうな印象である。
男気をめらめらと燃やしているのが伝わるのだ。
ジュース一本だぞ。
こんなに安い買い物はないな。
わはははは。

実は今日も業者さんが来ていたのだけれど、
帰り際にまたジュースを渡したら、
なんだか微妙な空気が流れた。
たしか前回は見に来ただけでジュース一本で、
今回は煙突の総取替えという大仕事にもかかわらず、
またジュース一本だけ渡したのだ。
「えっ、また、そんな、いつも、すいません、てへへへへ」
なんて笑って会釈していたが、
初回ほど嬉しそうではなかったぞ。
なんだ?
物足りないのか?
せこいとでも思っているのか?
どーなのだ
おやつはランクアップしていかないといけないものなのか?
欲しいのは真心だろ?
違うのか?
おい、どーなんだ?
あの笑顔はもう見れないのか?
おい、
おいってば。



ひよし





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仮病

細かなとこは忘れたけれど、
パチンコで負けて、
仮病を使ったことがある。

たしかその日は日曜日で、
ぼくは床屋に行くからといって嫁からお金を貰った。

近所のK店にこそこそと通っていた時期で、
負けがこんでいたぼくは、
床屋代を握り締め、
まっすぐにK店へと向かった。
はなからそのつもりだったのである。

その時のぼくはほとんどパチンコ依存症で、
財布に入っている金は、
じゃんじゃんとバチンコ台につぎこんでいた。

ポケットに残った最後の100円玉でさえ、
機械のサンドに放り込むほどだった。
重症だった。

さて、
今とは違ってパチンコのなんたるかを知らないぼくは、
やっぱりきっちりと負けて、
床屋代をすってしまった。

その時点でぼくの持ち金は0である。

いい年をして所持金が0なのである。

そこでやっとハッとしたぼくは、
我に返り、
このままではまずい、と思った。
嫁に怒られると思った。

嫁の怒りを回避する方法がないものか考えた。
「そうだ。具合の悪いふりをしよう」
ぼくは部屋に帰ると、
布団をひいて、もぐりこんだ。
そしてうーんうーんと唸りながら具合の悪いふりをした。
案の定心配した妻は
「どうしたの?」と声をかける。
しめた。
「うーんうーん」
「どうしたの?大丈夫?」
「うーんうーん、実はさ」
「うん、どうしたの?」
「パチンコで負けて床屋代全部使っちゃった」
「もう、なんだ。具合悪いのかと思って心配したじゃない」
「うん。ごめん」
ここまではぼくの期待したシナリオ通りだった。
そして、
病気じゃなかった安堵感がすべてを消し去ってくれる計算だったが、
そうではなくて、
しっかりと、
ぼくの仮病を使った情けなさが明るみになり、
非常に惨めな思いを味わったのだ。

このままじゃいかん、
パチンコをどげんとせんといかん
そう思って釘の勉強にとりかかったのである。

以来、仮病知らずである。
えへん。



ひよし

UP後
妻から指摘を受けた。
床屋代ではなく歯医者代であったこと、
しかも二万円だったそうだ。
すっかり忘れている。
きっと記憶を書き換えないと
生きていくのが難しくなるくらいに
当時のぼくのメンタルは弱かったんだな


八月

八月はうんうん唸りながら
小説のことばかり考えていた。

で、なんとか短編を二本書き上げることが出来たのだけれど、
ずっと部屋に閉じこもっていたので、
時々ストレスが爆発した。

猛然とバットを振る。
バットでゴルフスウィングをする。
押入れに隠れる。
網戸に顔面を押し付け、銀行強盗のできるレベルまで潰した状態で、道行く人を眺める。

などを試したのだが、

最もガス抜きの効果が高かったのが、
「なんでもさだまさし」だった。

「なんでもさだまさし」というのは、
誰の歌でもさだまさしの歌唱法で唄うという芸術的なパフォーマンスである。

さだまさしの物真似をマスターしている人には、
いますぐ始められることだ。

ぼくは当然、
小学校の時分に完璧にマスターしているので、
いつでも、
どこでも、
だれの歌でも、
さだまさしに変換することが出来る。

ポリスもプリンスもU2も、
元春も清志郎もユーミンも、
時をかける少女も、
セーラー服と機関銃も、
ハッとしてGoodも、
どれでもさだまさしで唄い切ることができる。

振り付けつきのセンチメンタルジャーニーなどは、
もう、
圧巻としかいいようがない。
伊代はまだ十六だから♪
が、
とても不幸なことのように聴こえる。

それにぼくは音痴なのに
さだまさしで唄うと
なぜか音痴が解消されるのだ。

そんな八月でしたね。



ひよし




ペンネーム

more...

かえるとクワガタ

嫌だと思った。
けれどぼくの口をついて出た言葉は
「いいよ」だった。
ぼくは他人事のように眺めていた。
みなみちゃんはぼくの虫かごの中に大きながまがえるを入れると、
ミヤマクワガタのつやつやと光る背中を摘み上げ、
「じゃあね」
といって帰っていった。
その姿をぼくはぼんやりと見送った。

ぼくはええかっこしいだった。
がまがえるとクワガタを取り換えることのできる凄い奴だと思われたい一心で、
みなみちゃんの持ちかけた取引に応じてみせたのだ。
その場では「すげえー」といわれていたが、
「すげえーバカなんじゃねえの」と心の底ではみんな思っていただろう。

その後落ち込んだ。
クワガタが惜しくて惜しくて立ち直れなくなったのだ。
するといとこのえーちゃんが声をかけてくれた。
「どうしたのさ?」
「かくかく・しかじか」
「よし、わかった。ついてこい」
というと、
えーちゃんはみなみちゃんの家に向かって歩き出した。
その後をついていった。
えーちゃんの手の中にはみなみちゃんの置いて行ったがまがえるが握られている。

玄関先から、
みなみちゃんとえーちゃんの言い争う声が聞こえる。
ぼくは道路から見守っていた。
するとドアが乱暴に開かれ、
えーちゃんが飛び出してくる。
手にミヤマクワガタを握っている。
「何すんのよ。あたしのよ。返しなさいよ」
と叫ぶみなみちゃんに向かって、
えーちゃんはもう片方の手に握っているがまがえるを、
びゅんと投げつけた。
がまがえるは宙を舞い、
みなみちゃんの顔に命中して、
砂利の上に落ちた。

かえるは腹を見せて、死んだ。
みなみちゃんは泣きだした。
えーちゃんは何事もなかったような涼しい顔で、去っていく。
ぼくは道路に立ち尽くしていた。

自分の手に戻ったクワガタに見惚れていた。
他のことなどどーでも良かった。
何が死に、
何が騒ごうが、
気にならなかった。

大損をせずにすんだことが凄く嬉しくて、
全身を幸福感で一杯にして、
掌のクワガタを見つめていた。




ひよし



スマートフォン

この世の中で一番馬鹿にして
忌み嫌っているものが
「いきっている奴」である。

ヨサコイの期間中に
メーキャップを施した連中とすれ違う時に
よくそれを感じる。

あの目
あの立ち姿
完全にいきっとる

ああーいやだ
かっこ悪い
自己陶酔の極致だわ
と寒気がする

ナルシストほどダサイものはない
そう信じている

まだ幼少の頃なら許される余地はある
けれど
大人になってからの
自己陶酔はみっともないだけの醜態なのだ
気をつけないと命取りになる

普段温厚な人柄で通っているぼくが
我を忘れてしまうほどの憎悪を燃やしてしまう相手が
いきっている奴である

先日
携帯の機種変更をした
無料で新品に取り替えるという知らせが来たのだ
機能は一緒
ただ新しくなるだけ
でもまあ、いいか、無料なんだから。
店に行って変更手続きをして帰ってきた
そのとき
待ち時間を使って店内にあるデモ機を一台ずつ触っていった
最新型の機種の操作性の高さに目を見張った
とくにスマートフォン
ボタンを使わずに指で操作する自在性は
実際にやってみると
感動するほどかっこよかった
しびれた

その夜
夢の中でぼくはスマートフォンを手にしていた
それもみんなの目に入るように
不自然に高く掲げて
指先を大げさに動かして操作している
完全にいきっている
どうだおまえらこれがスマートフォンだぜ
見ろよ
かっこいいだろ
そう
うっとりしながらいじくっている。

実際には、
手に入らなかった
スマートフォンを手にして
目を輝かせ
口元を歪めて
純度100%で
いきっている自分の姿を目の当たりにして
ものすごくショックを受けた

そんなにスマートフォンに憧れていたなんて
夢にも思いませんでした




ひよし



東海林くん

手をとると東海林くんは最初驚いていた。
けれど手を繋いで道路を渡ったほうが安全だと知ると、
今度は
力いっぱい
ぼくの手が壊れるくらいに握り締めて、
ぼくを無傷で向こう側に渡すのが自分の使命みたいに、
道路を駆け出した。

その勢いでぼくの足はほとんど地についていなかった。
向こう側に無事についても、
しばらくぼくの手を離さなかった。

それを見てクラスの連中が
冷やかすように囃し立てても
東海林くんはその手を離さなかった。
ぼくの手は壊れそうだった。

東海林くんはくるみを握りつぶしてしまうほどの怪力の持ち主だった。
ぼくの手はくるみほど頑丈ではない。
世の中には、
くるみを握り潰せる猛者がいるのだろうけれど、
東海林くんはまだ十三歳だった。

「うちの両親、
離婚するんだ」といって
東海林くんは薄ら笑いを浮かべながら、
ぼくの前にくるみを突き出して、
乾いた音を立てて、
それを握りつぶした。

ぼくが一緒に過ごしたのは中学の一年間だけだった。

二十歳の時、
夕刊で東海林くんの顔写真を見た。
見出しがついていて、
ひったくり犯を逮捕と書いてあった。
自転車で背後から近づき、
ハンドバッグをひったくる犯行を繰り返したのだ。

ぼくは高校生の時に一度、
東海林くんを見かけたことがある。
その時も彼は自転車に乗って、
悪そうな仲間と馬鹿笑いをしながら、
ぼくの前を通り過ぎていった。
五年ぶりだった。
ぼくと目が合うと、
ほんの少し眉を下げて、
それから、
気でも違ったみたいに
大口を開けて
奇声のような笑い声をあげて、
去っていった。

その笑い声が耳にまだ残っている。



ひよし









祖母

祖母はぼくの手を握り、
「わちのことが分かるか?」
と訊いた。
もちろん。
分かるさ。
ぼくは頷いた。
口は酸素マスクで塞がれていたし、
もし外れていても、
右足の痛みで、
口をきくことはできなかった。
熱のせいで頭が朦朧としていた。
祖母は
「わちが誰だかわかるなら、
それでいい」
といって、
病室を出て行ってしまった。

母に聴かされた話では、
祖母は、
ぼくが交通事故に遭ったことを知ると、
「頭は大丈夫なのか」と
最初にぼくの頭の心配をしたらしい。
そして、
搬送先の病院に向かう車中でも、
ずっと、
「頭が大丈夫ならなあ。
頭さえ大丈夫ならなあ」
とつぶやいていたらしい。

ぼくの足は車のバンパーとバイクの後輪に挟まれて、
骨が飛び出していたのだけれど、
そんなことは一切気にせず、
祖母は
ぼくの頭の心配ばかりしていた。

翌日、
母と一緒に現れた祖母は、
やはり、
ぼくの顔を見るなり
「わちが誰だかわかるか?」
「頭は大丈夫なのか」
と繰り返して、
ぼくがどちらの質問にも大きく頷くと、
「そうか、ならいい」
とすっかり安心して、
帰っていった。
病室を出る際、
小さな声で、
独り言のように、
「足なんかどうでもいい。
ひよしがひよしのままなら、
後は、
どうでもいい」
とつぶやいて、
小さな背を丸め、
帰っていった。

ぼくも
別に歩けなくってもいいか
と思った。

そう思ってくれる人がいるんだから、
歩けなくなっても、
いいや。

そう思って、
すこし泣いてから、
ぐっすりと眠った。


ひよし



双子

枕元に
小さな女の子が二人
立ったことがある。

金縛りにかかり、
じたばたしていると、
誰かが顔を近づける気配を感じた。

目が開かないので、
当然、
気配でしか察することはできないのだが、
誰か
部屋の中にいるらしい
しかも二人

会話から、
およその見当をつけた

双子の
まだ幼い
女の子のようだ

右の子が
「ねえ」
と口を開いた。
「なあに」
と左の子が応じる。

「この人、寝てると思う?」
と右が訊く。

ぼくが寝ているのかが気になるようだ

「寝てるんじゃない?」
と左が言う。

もちろんぼくは金縛り中だったので、
ぱっちり起きていたのだが、
彼女達から見れば、
ぼくは
目を閉じて、
寝顔を晒しているので、
判断がつかないのかもしれない

すると右の子が
「本当に眠っていると思う?」
と笑いを含みながら問うた。
大人びた声だった。

「まさか、起きてるわけないじゃない」
と左の子が返す。
大人の女性の会話を聞いているようだった。
「それじゃあ、確かめてみようか」
と右の子は言って
左の子と一緒に
「せーの」
でぼくの顔を覗き込んだ。

ぼくは必死に寝てるふりをして
二人がいなくなるのを待った

寝てるふりをしているうちに
ぼくは本当に寝入ってしまい
目を覚ますと
朝になっていた



ひよし







みうらじゅん

みうらじゅん
といっても
あの、ご本人ではなく、
ぼくが勝手に命名し、
そう呼んでいた男の話である。

彼は琴似のA店をネグラにするパチプロだった。

中肉中背で、
色白の顔に、
長髪と眼鏡。
ぼくはこっそり「みうらじゅん」とあだ名をつけた。

釘を読めるようになったぼくが、
足繁く通い始めた時期に、
みうらじゅんは、
すでにA店の中で、
一目置かれる存在として、
店からも客からも認められていた。

A店は昔の商店街に見かけるような小規模なホールで、
羽根物や一般電役、現金機などを
長く大事に扱う
地域密着型のパチンコ屋だった。

みうらじゅんは、
いつも
いかなる状況でも、
ドル箱を積み、
淡々とした風情で、
台の前に坐っている。
けれど、
性格は穏やかで、
気さくで、
常連のおばちゃんに話しかけられると、
茶色い歯を覗かせて、
世間話にもつきあう。

羽根物からCR機まで、
なんでもござれだった。

ぼくはよく、
彼が打ち終わった後の台を覗きに行った。
そして、
どうしてその台を選んだのかを、
自分の目で探ろうとした。
けれど、
さっぱり分からなかった。
ぼくの目では、
彼が見つけたものを、
見つけることは出来なかった。
それは
ぼくがパチンコを断つ日まで変わらなかった。
いっぱしの釘読み屋として自負していたけれど、
みうらじゅんのそれとは、
雲泥の差があった。
所詮ぼくは兼業の半プロで、
彼はそれを生業にした専業のパチプロなのだ。

先日、
久しぶりにA店を訪れた。
経営方針が変わり、
店のラインナップも様変わりしていた。
どの台に目を合わせても、
とても打てる代物ではない。
ぼくはそのまま店を出て、
しばらく町をさまよった。

どぶ川になれ果てた川からは魚の姿が消えるように、
もうA店には、
プロの影すら見つけることはできなかった。

ぼくは札幌駅のとあるホールを覗いた。
そこに足を踏み入れるのも
数年ぶりである。

ひとりの男が、
閑散とした薄暗いホールの中で、
釘を読んでいた。
ぼくはその男の釘を読んでいる姿に見覚えがあった。
いや、
憧れのまなざしで見ていた対象なのだ。
彼の姿は、
目に焼きついている。
忘れるわけがない。

みうらじゅんだった。



ひよし



おみやげ

恵庭のおばあちゃんから、
「おまえにおみやげを買ってきた。
楽しみに待ってなさい」
と電話口で言われたので、
思い込みの激しかったぼくは、
受話器を置くなり、
「やった。
ボルテスファイブの超合金だ。
やった。やった。
どうしておばあちゃん分かったんだろ?
ぼくが欲しがってたの。
やった。とにかくやった。やった。やった」
とその場で舞い上がってしまった。
当然のことながら、
恵庭のおばあちゃんは、
会話中、
ボルテスファィブの「ボ」の字も口にしなかった。
「おみやげ」と言っただけである。
0を100にした、
ぼくの、
完全なる思い込みである。

翌日、
急いで学校から戻ると、
恵庭のおばあちゃんが茶の間にいて、
「おお、
元気そうだ。
はい、
おみやげ」
と渡してくれたのは、
こけしだった。

登別のこけし、
である。

勝手に超合金だと思い込み、
気が狂わんばかりに、
「ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ、
ボルテスファィブ」
と絶賛ボルテスファィブ中だったぼくは、
ショックのあまり、
おいおいと声をあげて、
泣き出してしまった。

突然の出来事に、
戸惑う家族の横で、
普段のぼくのことを何も知らない、
恵庭のおばあちゃんが、
もらい泣きを始めた。
「そんなに喜んでもらえるなら、
もっと大きいのを買ってきてあげたのに」
おばあちゃんも、
完全に思い込んでいるのだが、
目の前で孫が泣いているので、
可能性は0ではない。
50はある。

こけしを手にして泣いているぼくの思い込みは、
0だ。
おばあちゃんはボルテスファィブのことなんて、
何にも知らないからだ。
もしも、
仮に知ってたとしても、
温泉の土産屋にボルテスファィブが売っているわけがない。

そのためか、
トラウマなのか、
以来、
こけしに対する興味が0である。



ひよし

ねずみ

母子ともども「ねずみ」が嫌いで、
一時、借りていた家には、
頻繁に出たので、
毎日恐々として過ごした。

現れると、
父の出番である。
人間に必要なデリカシーの不足している父は、
ゴルフクラブを手に
嬉々として追い回し、
パキーンと一撃をくれて、
まるで300ヤードドライブを放ったジャンボ尾崎のような面持ちで、
茶の間に戻ってくる。
「ど、どうでした?」と母。
「ん?何だ?」と父。
「なんだじゃありませんよ。あの、その、言わせないでください。
どうしたんですか?」
「ん?ねずみか?」
キャーと母の甲高い悲鳴。
「いやですよ。どうしてその名前を」
「ばかやろう。名前ぐらいでいちいち騒ぐ奴があるか」
「いやなものは、いやなんですよ」
「あんなもの、どうってことないぞ」
「ということは、退治してくれたんですね?」
「ふん。表玄関を見てみろ」
「え?」
「後で捨てておけ」
「何言ってるんですか。そんなのあたしに触れるわけないじゃないですか」
「うるさい。後は適当にしろ」
どうやら父はどSらしい。
母をいじめるのが好きなのだ。
好きな子をいじめて、
ぞくぞくしてるのだ。

そんなくだらないやり取りが行われている間に、
外ではえらいことが起きていて、
うっかり外に出たぼくが、
それを目の当たりにすることになる。
近所に住む子供たちが集まって、
人垣ができている。
なんだろ?
と思って隙間から覗いてみると、
くたっとなったねずみの死体を、
野良猫がむしゃむしゃと食べている。
ぼくが目にしたのは、
まさにねずみの頭がバキバキと猫の口の中で噛み砕かれる瞬間だった。
キャーと母そっくりの甲高い悲鳴。
まだ声変わりしてなかったから、
まったく一緒。
どよめく子供たち。
「気持ちわりぃー」と叫ぶ子、
中には吐き気を催し、
えづいている子もいる。
猫は我関せず、
クールにカルシウムを摂取。
ぼくは悪夢を見ているような気分になって、
くらくらとめまいがしてきた。

そこではっきり分かったことは、
生きているなにより、
死んで、
食べられているなにのほうが、
より一層不気味で、
グロテスクで、
怖いということである。

ああ、後味の悪い話。


ひよし






透視

友人から透視された経験がある。
二十二歳くらいの頃だ。
昔の話で、記憶も曖昧だが、
とにかく会いたいから街に出てきてくれ
という電話があり、
ぼくはそれを面倒くさく感じて、
断ろうと思った。
すると、
友人が先手を打って、
「断れないよ」というのだ。
まるでぼくの心の中を見透かしたような口調である。
友人はこう続けた。
「おまえは今日俺に会うことになっているんだから、
断れないよ。
おまえは出てくる。
そして俺たちは会う。
これは変えられない。
決まっていることだから」

これはまた随分と強気な発言、
いったいその自信はどこから来るの?
「俺には見えるんだ」という。
こいつしばらく会わないうちに、
相当いかれてきたな。
「信じてないみたいだから、
いまのお前の姿を当ててやるよ」
ほう。
やってみてくれ。
「どうぞ」とぼくは言った。
ぼくはその時、
麦わら帽に、
ボーダーのTシャツ、
茶色のズボン、
といういでたちだった。

それを当てた。

「なんで分かるの?」
「だから、見えてるんだって」
「今も?」
「そう」
「テレビ中継みたいに?」
「いや、イメージが浮かぶんだ」
「すげえ」といってぼくは会いに行った。

会うと友人はひどく丁寧で、
腰が低く、
威圧的なところもない。
電話で与えた雰囲気とはまるで別人である。

友人の案内でバーに入り、
カウンターで酒を飲んで、
色々と話をした。
とりとめのない話の最後に、
友人は、
「おまえは三十歳になったら、
車を運転して、
林道に入り、
そこで停車して、
トマトを齧る」
と予言した。

それはまったく外れた。

なぜ電話のときにだけ、
透視能力を発揮して、
服装をばっちり当てることができたのか?
さっぱり分からない。

五年ぶりの再会だったのだが、
何のためだったのか、
いったいどんな用件だったのか、
あれから何度も思い返しているけれど、
さっぱり分からない。



ひよし





美男子の木

美しい少年が
たくさん木にぶら下がっているのを
目にしたことがある。

高校三年の時に
たまたま
ぼくらの男子校と
どこかの女子高の遠足の日程が重なり
目的地で一緒になった。

クラスごとではなく
仲のよいグループ同士で行動していたので
いろんな輪ができていた

もてない男だけの輪
もてない女だけの輪
男女混合の輪

男女混合の輪では
記念撮影が始まった

ぼくと親友は木陰に寝転んで
ふて寝していた
すると
「どけよ」と怒鳴られた。
目を開けると
ジェームスディーンが顔を真っ赤にして
ぼくらのことを睨んでいる。
「邪魔だ。どけよ」
見ると
氷室京介
近藤真彦
田原俊彦
真田広之
吉川晃司
三上博史
マシュープロデリック
トムクルーズ
そうそうたるメンバーが
ずらりと勢ぞろいしている。
全員、
うちの高校のトップスターで、
近くの女子高にファンクラブがあるほどの人気者たちだ。
ぼくと親友がぼんやりと突っ立っていると
ジェームスディーンを先頭に
全員で目の前の木を昇り始めた。

ふだんはどちらかというと、
けだるい感じで、
木登りなんてしない連中なのに、
奇声をあげながら
ぐいぐい木を登っていく。

ぽかんとしていると
「分かった」と親友がつぶやいた。
「なにが」と訊くと
「あいつら女の子にもてたくてあんなことしてるんだわ」といった。
「まじで?」
「まじで」
「充分もててるじゃん」というと、
「ふだんはな。でもどういうわけか、いまは、全然女子が寄ってこないだろ」
「そういえば、そうだな」
「だからアピールが足りないと思ったんだろうな」
「なるほど」
ぼくらは木を見上げた。

一本の木に九人の美男子がぶら下がっている。
でもどういうわけか、
さっぱり女子が近寄ってこない。
「全然だめみたいだな」親友が首をひねる。
「あんなに美しいのにな」ぼくも傾げる。

しばらくすると、
親友が、
「まきの」
「ん?」
「おまえも登ってみたら」

沈黙。

「おまえこそ登れよ」
「おまえが行けよ」
「いや、おまえが行けよ」
とぼくらは互いを突きあいながら、
互いの容姿に安心し、
決して木に登らない生き物であることを
承知していた。

賢明である。


ひよし




クワガタの採り方


小学三年の夏休みの宿題は、
休み中の体験を絵にして教室で発表するというものだった。

真っ白な画用紙を前にぼくは頭を抱えた。
休み中、
どこにも行かなかったので何も描くことがない。
しかし何か描かなくてはならない。

クワガタを採りに行きたかった。
それを絵にしてみんなに発表したかった。

いとこからクワガタの採り方について面白い話を聞いた。
樹を蹴飛ばしてクワガタを採ると言う。
なんて斬新で乱暴でかっこいい採り方なんだ。
興奮した。
樹を蹴ると上から木の実のようにクワガタが落ちてくると言う。
いっぺんに十匹も採れることもある。
頭の上にミヤマクワガタが着地したこともあると言う。

筆をとり、
天をつくような巨木と、
それを力いっぱいに蹴る自分、
それから、
ミヤマクワガタを頭に乗せて目を回しているいとこ、
空からばらばらと降り落ちてくる無数のクワガタの絵を描いた。
一晩かけて着色し、
学校に持っていった。

いとこの体験談の中に自分を主役にして登場させ、
みんなの前で話した。
ぼくは作り話が得意だったので、
みんなをすっかり騙すことが出来た。
樹を蹴る場面を実演すると笑いが起きた。
目を輝かせて、
ぼくのことを見つめるみんなの姿は、
いとこを見つめるいつかの自分だった。

ぼくは拍手喝さいを受け、
面白かったと先生から褒められ、
その絵は廊下の壁に飾られることとなった。

クラスには、
ぼくのように、
どこにも行かない子が何人かいた。
彼らは公園で遊んだ話や、
近所で体験したさして珍しくもない話を発表し、
まばらな拍手を受けた。
彼らの絵は教室の壁の隅のほうに貼られ、
話題に上ることはなかった。

「あんたの絵が廊下に飾られてるんだって」と母に言われ、
ぼくは驚いた。
いつのまにか母の耳に伝わっていた。
「見に行かないといけないね。どんな絵を描いたの?」

母に見られる前に絵を処分しなくてはならない。
嘘の体験を描いた事がみんなにばれてしまう。

翌朝、
誰よりも早く登校し、
廊下の壁から自分の絵を外した。
トイレの個室の中で画用紙を細かく千切り、
便器の中へ捨てて流した。
誰かに覗かれているような気がして、
何度も頭上を見上げた。
誰もいなかった。
便器を蹴った。
何度も蹴った。
蹴る度に、
いつかのみんなの笑い声が頭の中で響くようだった。

拍手喝さいを受けながら、
便器を見つめ、
唇を噛んだ。



ひよし

淡い

山田さんのびんたによって
「ちつ」の意味を学んだぼくは、
そのまま山田さんと淡い仲になり
その後
淡い季節のはかなさを味わうこととなる。

はじめに断言しておくが
ぼくは鼻くそは食べていない。

鼻をほじることはあるが、
食べたりしない。
もし食べるなら
誰もいないことを確かめて――
いやいや
食べるわけがない。
あんな不味いもの――
いやいや
本当に食べない。

授業中
突然後ろの席の女子から
「いやあ、まきの、鼻くそ食べた」
と指をさされた。
食べるわけがない。
授業中じゃないか。
食べるなら休み時間にトイレで――
いやいや
なんでそうなるの?
「きもーい」
何を言っているんだ?
食べてないし、
それにまだほじってもいないじゃないか。
ぼくが怪訝な目で見つめ返すと、
「いやあ、食べたあ」と確定済みで言う。
おいおい。
いい加減にしたまえ。
見間違うにも程がある。
いまのはMAXだぞ。
正気になれ。
そもそも
ぼくがあんな不味いものを
みんなが見ている前で
食べるわけないじゃないか。
鼻くそなんて、
誰もいないところでこっそり食べるものだ。

ぼくは相手にせず、
鼻で笑って済まそうとした。
困った奴だぜ、
なあ、山田さんと、同意を求めると、
山田さんはぼくから逃げるように
身をよじり、
「えーショック」と言ったのだ。
目を見ると
本当にショックの色が浮かんでいる。

山田さんは
両手で口を抑え
顔面蒼白だ。
「本当?」と目撃者の女子に確かめたりしている。

山田さんとその女子は同じ小学校出身で友人歴が長い
親しくなったとはいえ
所詮ぼくとは数ヶ月の仲である。
その後時間をかけて誤解をといたのだが、
ぼくと山田さんの間に流れていた
親密なものは
少しずつ希薄になり
席替えをもって消滅した。

淡いなあ。




ひよし

びんた

女の子に思い切り
びんたされたことがある。
中一の時である。

ある男子から「ちつ」と云われて、
「ちつ」を知らなかったぼくは、
「ちつ?」とその男子に訊き返したのだ。
すると
「おまえ、まじか?」みたいに笑われて、
ぼくがかまととぶっている、
ということにされた。
まあ、
たしかに女子の目を気にして、
しかも、
自意識過剰な人間だったので、
かまととぶる傾向があったことは否めない。
けれど本当に「ちつ」という言葉を初めて聞いたし、
「ちつ」から連想できるものといえば「土」
ぐらいしか思いつかないのである。
そう伝えると、その男子は「ふうん、じゃあ山田に訊けば?」
と、
なんだか挑発的に言うのだ。
その言い方にかちんときたぼくは、
「ちつ」についてのかまとと疑惑を晴らすべく、
隣りで他の女子と雑談している山田さんの肩を叩いた。
「なに?」
「ちつってなあに?」
「え?」
「ちつってなあに?」
びたーん
と音が響いた。
人間の頬を手の平で思い切り殴ると、
「びたーん」という音が鳴るのだ。

その一発で「ちつ」の意味するものが
なんとなく分かったし、
かまとと疑惑も晴れたようなので、
まあ、
一件落着といえば、
落着なんですけどね。



ひよし

いびき

どうしてこんな状況で
ぐっすり眠れるの?と思ったことがある。

アパートでボヤ騒ぎが連続し、
犯人はぼくの部屋の隣りに住む夫婦ではないかと、
目星をつけられていた。
しかし決定的な証拠がなく、
逮捕をするまでに至らなかった。

結果的には、その妻が精神に病を抱えている人で、
放火犯であると、
警察から断定されたのだが、
ぼくが理解できないと感じたのは、
夫なのである。

妻は自分の部屋に火をつける。
だからいつも命からがら、
炎をくぐり、
やっとのことで逃げ出すのは、
彼女のそばにいる、
夫なのだ。

妻が死を望んで火をつけていたのか?
それとも放火騒ぎを起こしたいだけで、
そんなことをしたのか、
警察は教えてくれないので、
真実は分からないままだ。
けれど、
そのたびに、命を落としそうになったのは、
その部屋で、
グーグーといびきをかいて
布団の中でぐっすりと眠り込んでいる夫なのだ。

ボヤ騒ぎが連続し、
アパート中が不眠症になった。
みんなの寝静まった時分を狙いすましたように、
放火犯が火をつけるからだ。

ぼくも眠れない夜を過ごして、
ふらふらだった。
翌日の仕事のために夜が来たら布団に入る。
少しでも眠り、体を休ませる為である。
でも眠れなかった。
常に恐怖につきまとわれていたので、
精神が高ぶり、
目をつむっても、
眠ることなどできない。

布団の中で闇を睨んでいると、
壁一枚隔てた隣りの部屋から、
グーグーといびきが聞こえてくる。
夫のいびきだ。
それは床を揺るがすほどの、
大きな低音のいびきだった。
「おいおい、
寝てる場合じゃないだろ」
とぼくは思う。
「あんたの奥さんがそろそろ火をつける時間だぜ」

耳を澄ます。
いびきのその奥に、
衣擦れの音と、
マッチを擦る音が聞こえやしないかと――
夫のいびきは止まらない。
ますます大きくなる。

その夜も、火が出て、
火災報知器がけたたましく鳴り、
ぼくと妻はパジャマのまま、
アパートから外へと飛び出した。

夫は消防士に抱えられて、
救出された。
妻は泣き叫び、
興奮し、取り乱している。
夫はまたぐっすりと眠り込んでいたために、
たっぷりと煙を吸い込み、
朦朧としていた。

「おっさん、
あんたの奥さんが火をつけているんだぜ」
とぼくは思う。
どうしてぐっすり眠れるんだ?

次の日
布団に入ると
また夫のいびきが聞こえてくる。
地響きのような大きないびきが――



ひよし

駄目だこりゃ

寿司屋で「駄目だこりゃ」と思ったことがある。
二十歳の頃、東京の神田のガードレール下で
寿司を食べた。

まず職人がくわえ煙草なのだ。
次元大介みたいにずっと煙草をくわえながら、
寿司を握っている。

カウンターにはもう一人、
顔のそっくりな男がいて、
どうやら双子の職人らしい。

そっちの方は鼻をほじるのだ。
どっちもあってはならないことだ。
でも二十歳で、
初めての東京だったから、
凄いところだな、と圧倒されてしまい、
何もいえなかった。

会計になり、
友人と二人で五、六貫食べただけで、
五千円も要求された。
明らかなぼったくりで、
そのあまりにも堂々としたぼったくりぶりに、
さらに圧倒されて、
完全にびびって、
おとなしく金を払って店を出た。

のれんをくぐり、
「駄目だこりゃ」
と思った。

いかりや長介のことなどこれっぽちも思わずに、
素で、
ぼくは
「駄目だこりゃ」
と頭を振り、
苦笑いを浮かべた。




ひよし

ホーム

最初はパーティの二次会で
丸テーブルを囲み、
二度目はマスターの店で
カウンターに並んで飲んだ。
たったそれだけの機会しかないのに、
ぼくは
その人達から、
今まで味わったことのない、
「ホーム」を感じた。

四十年何処にいても
「アウェー」しか感じたことがなかったのに、不思議だ。

スナックのカウンターなどで、
一人で来店し、
実に楽しそうに過ごしているおじさんがいるけれど、
きっとそこがおじさんの「ホーム」なのだろう。

ぼくもそうしてみたいと思っている。



ひよし

チャンピオンの器

青いぺらぺらの素材に
Championと表記された
やたらにシンプルなバッグが
流行したことがあった。

なんということもない
ただのスポーツバッグだが、
その変哲のなさと
デザインが受けたのか、
瞬く間にぼくの田舎を席巻し、
いたるところ
Championのバッグだらけになった。

クラスのほぼ全員がそれを持ち歩いていることになり、
当然ながら、
バッグの買い替えを考えている者は、
迷いなくChampionのバッグを購入した。

もちろんぼくも欲しくなり
母にバッグの買い替えを提案し、
「どんなのがいいの?」
「ねーちゃんと同じのでいいよ」
コレが欲しいとはっきり言うのがなんとなく恥ずかしくて、
姉がすでに持ち歩いていたChampionのバッグを指差し、
「なんだっていーけど、
ま、
アレでいんじゃねーの?」風に
母にバッグの情報を伝えた。

その頃は――いまも
そうだけど、
日用品を買うという習慣がなく
買ってきて貰ったものを使うというのが
あたりまえになっていたので、
つまり、
どんなものがあたるのかは、
母次第なのである。

母はセイユーに赴き、
特売コーナーに山積みになっていた
青いChampionのバッグを六百八十円で購入し、
ひどく安かったので満面の笑みでぼくに渡した。

母は決して無知な人間ではないが
英語のスペルには知識が深くない。
バッグに書かれたスペルは良く見ると
Championではなく、
Challengerだった。
「なんでみんなチャンピオンなのに
おれだけチャレンジャーなんだよ」
と涙目で怒ったが、
「男がそんなことで
うだうだ言うな
お前なんかチャンピオンの器じゃない」
と逆切れされた。
 
――チャンピオンの器?じゃない?

以来、無冠のままである。



ひよし



きらわれ屋

藤子F先生の作品に
「きらわれ屋」
という短編がある。
古い作品なので
あらすじしか覚えていない。

宇宙船の乗組員の中にひとり、
「きらわれ屋」なる男が
送り込まれていて、
様々なトラブルを仕掛けて、
どんどん周りの人間から嫌われていく
という話だった。

宇宙船のオーナーが
乗組員たちの結束を高めるために
高額な報酬で
プロのきらわれ屋を雇ったのだ。

きらわれ屋は
すべての悪意を自分に収束させる。

人種も性格も異なる
乗組員たちは
共通の一人の敵を見つけたことによって
団結し
協力し
助け合い
ひとつにまとまる。

任務は無事に遂行され、
オーナーは
きらわれ屋に
多額の報酬を支払い
労をねぎらう
という内容だった。

政府は「きらわれ屋」を国民に差し出せばいい。
きらわれ屋に
不謹慎で
自己中心的な
暴言をさせたらいい。

架空の「人間」を作り、
みんなに好きなだけ攻撃させたらいい。

ぼくらは一つの宇宙船に乗っている
乗組員だ
重要な任務を抱えている
だから
いがみあってる場合ではない
任務を優先させよう

凄腕の「きらわれ屋」の登場を願う。

素人の「きらわれ屋」はひっこんでて欲しい。


ひよし







日本人のモラルに世界が驚く   転載記事です

日本人のモラルに世界が驚く、
という記事があり、
転載させて頂きたいと思います。
以下は
http://news.livedoor.com/article/detail/5410078/
からのコピペです。
ツイッターでのつぶやきをまとめたものです。
内容だけの抜粋とさせて頂きます。
被災時に目にした日本人の行動に対してつぶやかれたコメントの数々です。


「ディズニーランドでは、ショップのお菓子なども配給された。ちょっと派手目な女子高生たちが必要以上にたくさんもらってて「何だ?」って一瞬思ったけど、その後その子たちが、避難所の子供たちにお菓子を配っていたところ見て感動。子供連れは動けない状況だったから、本当にありがたい心配りだった」

「国連からのコメント「日本は今まで世界中に援助をしてきた援助大国だ。今回は国連が全力で日本を援助する。」 に感動した。良い事をしたら戻ってくるのです。これがいい例なのです」

「一回の青信号で1台しか前に進めないなんてザラだったけど、誰もが譲り合い穏やかに運転している姿に感動した。複雑な交差点で交通が5分以上完全マヒするシーンもあったけど、10時間の間お礼以外のクラクションの音を耳にしなかった。恐怖と同時に心温まる時間で、日本がますます好きになった。」

「聞いた話でびっくりしたのが、とっさに「入口の確保」と揺れてるにも関わらず、あの状況で歩いて入口を開けた人が居たのが凄いと思った。正直、シャンデリアも証明も何時落ちるか分からないのに、凄く勇敢な人が居た事に感動した。」

「バスが全然来ない中、@saiso が、バス停の前にある薬局でカイロを買ってきて、並んで待ってる人みんなに配った!」

「ディズニーシーに一泊した娘、無事帰宅しました!キャストのみなさんが寒い中でも笑顔で接してくれて不安を感じることなく過ごせたそうです。防寒のカイロやビニール袋、夜・朝の軽食と飲み物、おやつまで。ディズニーの素晴らしさに感動です。頑張ってくれたキャストさん、ほんとにありがとう!!」

「この地震が、きっかけになって、失いかけていた日本人本来の良さが戒間見れた気がする。犯罪はする様子はなく、助け合い、律儀、紳士的。普段日本人は冷たい人が多い…。って個人的に感じてるんだけど、多くの人が今回で「絆」を取り戻しつつあるように見えて、それがなんか感動して、泣けてくる。」

「TL見て感動した。みんなが、ひとりひとりが大変な状況にいる人に笑顔を伝えようと、前向きになってくれるような発言がいっぱいで。TLがあたたかい。みんなのコトバを見て笑顔が少しずつでも増えればいいな。被災地の方、頑張れ、応援してくれる人がたくさんいます。」

「ホームで待ちくたびれていたら、ホームレスの人達が寒いから敷けって段ボールをくれた。いつも私達は横目で流してるのに。あたたかいです。」

「外国人から見た地震災害の反応。物が散乱しているスーパーで、落ちているものを律儀に拾い、そして列に黙って並んでお金を払って買い物をする。運転再開した電車で混んでるのに妊婦に席を譲るお年寄り。この光景を見て外国人は絶句したようだ。本当だろう、この話。すごいよ日本。」

「ツイッターやUSTでの状況共有と、それに連動するマスコミの動きは、阪神淡路大震災の時とは比べ物にならない質の高さを感じる。もちろん過去の辛い経験から得た教訓を、みんな活かそうとしている感動。」

「それにしても、電話もメールも繋がらなかった中でのTwitterの強さには感動した。 171より役に立ったんじゃないだろうか。 否定的な意見も多いけど、垂れ流されたRTのほとんどはきっと誰かの心を支えたと俺は思います。 必要不必要は選ぶ側で決めればいいだけ。」

「絵師さんたちがこの地震でみんなに元気付けようと必死に美しい絵や励ましのイラストを描いていることに感動。みんな自分にできることをしたいと思っているんだね。」

「本当に感動。泣けてくる。⇒BBCめっちゃ誉めてる。地球最悪の地震が世界で一番準備され訓練された国を襲った。その力や政府が試される。犠牲は出たが他の国ではこんなに正しい行動はとれないだろう。日本人は文化的に感情を抑制する力がある。」

「1階に下りて中部電力から関東に送電が始まってる話をしたら、普段はTVも暖房も明かりもつけっぱなしの父親が何も言わずに率先してコンセントを抜きに行った。少し感動した。」

「日本人すごい!!こんな時にも山手線ホームできれいに整列してる …涙。有楽町駅を上から眺む。 http://twitpic.com/48kn1u

「昨日の夜中、大学から徒歩で帰宅する道すがら、とっくに閉店したパン屋のおばちゃんが無料でパン配給していた。こんな喧噪のなかでも自分にできること見つけて実践している人に感動。心温まった。東京も捨てたもんじゃないな。」

「日本って凄い。官僚も民間も、皆で助けようとしてる。トラックの運転手も有志で物資運んでるらしいし、東北の交通整備をヤクザさんがやってるという話も聞いた。最近、日本に対して誇りを持てないことが続いていたけれど、そんなことない。日本は凄い国だ。素直に感動してる。日本国の皆さん頑張ろう!」

「Twitterの方々の情報とかが一致団結しててすごくたすかります。みなさま親切です!!こういうとき、なんか、感動します。最近は近所とつきあいなかったり冷たい世の中だとか思ってたけどそんなことなかったね。」

「ドイツ人の友達が地震が起きた時に渋谷に居て、パニックになっていた所を日本人に助けてもらったらしく、その時の毅然とした日本人の態度や足並み乱さずに店の外に出てやるべきことを淡々とこなす姿にひどく感動し、まるでアーミーのようだったと言っていた。」

「スーパーで無事買物出来ましたヽ(´o`; でもお客さんのほとんどが他の人の事を考えて必要最低限しか買わない感じだったのが感動しました(涙)」

「実際日本すごいよ。昨日信号が一カ所も機能していない御殿場市でもお互いにドライバー同士譲り合ってたし、地元のおじいちゃんおばあちゃんが手信号やってくれてたりで、混乱もなく本当感動した。9時間運転してたけど前車を煽るようなドライバーはもちろんいなかったし、みんな譲り合い精神。」

「タクシー運ちゃんと電車駅員さんとおばさんと話したけど、みんな遅くまで帰れなかったりしてすごく疲れているのに、苛立つ事なく、言葉遣いもふるまいも丁寧で、逆に気遣われてしまった。「みんな大変だから」という"みんな"って意識があることに感動するし、私も受け継いで大事にしたい文化。」

「サントリーの自販機無料化softbankWi-Fiスポット解放、色んな人達が全力で頑張っててそれに海外が感動・協力してる。海外からの援助受け入れに躊躇したり自衛隊派遣を遅らせたりしてた阪神淡路大震災の頃より日本は確実に強い国になってるんだ。みんな頑張ろう。」

「今朝の朝礼で「何があっても決して不安な顔は見せずに売り場に立つ以上はおもてなしをする気持ちを忘れずにお客様を安心させてあげてください」ちょっと感動した。がんばるか。開店です!」

「井上雄彦さんがものすごい勢いで笑顔のイラストをいっぱいあげてて感動する。励ましとか勇気とかメッセージって、こういうことなんだなーと思う。 RT@inouetake Smile42. http://twitpic.com/48n11d

「昨日、信号が完全に機能していなかった鎌倉で、人力車のお兄さんたちが手信号やってたのと、モータープールで停電のために出られなくなってる車を近所の住民さんたちが車持ち上げるの手伝ったりと、人の温もりにすごく感動した」

「TLの拡散希望を見て思ったことは、阪神淡路大地震から学んだことがとても多くツイートされていること。当たり前のことなんだけど、やはり人間は、学んで考えることができる生き物なんだと改めて思い、感動した。」

「ローマにいる友達からメール。ローマの人々はニュースを見ながらこのような状況でも冷静に対処する日本人に感動し、尊敬の念を覚えながら、非常に心配しているとのことです。」

「昨日、裏の家の高1になるお兄ちゃんに感動した。 家に1人で居たらしく、地震後すぐ自転車で飛び出し近所をひと回り。 【大丈夫ですか―――!?】と道路に逃げてきた人達にひたすら声掛けてた。あの時間には老人や母子しか居なかったから、声掛けてくれただけでもホッとしたよ。 ありがとう。」

「警備員の友人何人かが町田~相模大野で夜間警備のボランティアをしていたので手伝ってきた。年齢問わずいろんな知らない人同士が助け合っていて心強かった。ちょっと感動してトイレの隅で泣いた。」

「僕は感動しました。バイトの先輩が1人でも救うために寒い中紙に「バイクでよければ送ります」と書き駅前で掲げ鳶職のお兄ちゃんを所沢まで送ったそうです。世の中まだ捨てたもんじゃないなって思いました。本当に尊敬です!!自分もなんか人の役に立ちたいと生まれて初めて思いました。」

「浦和美園からタクシー使えると思ったのが甘かった…30分歩いてたら知らない人が車に乗せてくれた(つд;*) 人間の優しさに感動。ありがとうございました。」

「昨日、歩いて帰ろうって決めて甲州街道を西へ向かっていて夜の21時くらいなのに、ビルの前で会社をトイレと休憩所として解放してる所があった。社員さんが大声でその旨を歩く人に伝えていた。感動して泣きそうになった。いや、昨日は緊張してて泣けなかったけど、今思い出してないてる。」

「停電地区のほとんどの店が店を閉めてる中、あるセブンイレブンが店内陳列棚にいくつもろうそくを置いて、営業をしていた。レジが使えないため在庫確認用のハンディで値段確認し読み上げ、もう1人が電卓で計算、もうひとりが懐中電灯で照らす。その状態でレジ2台稼動させていた。感動した。」

「長女いわく、横浜の避難所に向かう時に、知らない人達と声を掛け合い、場所を教え合っていたそうです。普段は冷たいと思っていた他人の優しさに触れ、感動したそうです。日本人のいざという時の団結力を再認識しました。まだまだ日本も捨てたものではないです。」

「何時間も歩き続けてたんだけど、至る所でトイレかしますとか、休憩できますとか言うビルや飲食店が沢山あって感動しました。とある企業ビルの人がボランティアで、○○線運転再開ですー!とか、休憩できますー!!って呼びかけてるの見て感動して泣きそうになったマジでw日本も捨てたもんじゃないな」

「都営大江戸線の光ヶ丘方面行きは、非常に混雑しています。ホームにも、改札の外にも、電車を待つ溢れんばかりの人。でも、誰一人列を崩さず、通路を開け、係員の誘導に従っている。ロープがあるわけでもないのに、通る人のための通路スペースが。その不自然なほどの快適さに、ただただ感動するばかり。」

「終夜運転のメトロの駅員に、大変ですねって声かけたら、笑顔で、 こんな時ですから!だって。捨てたもんじゃないね、感動した。」

「昨日4時間かけて歩いて帰ってきた主人。赤羽で心が折れそうになってた時「お寒い中大変ですね!あったかいコーヒーどうぞ!」って叫びながら無料配布してるおっちゃんに出会った。これがあったから頑張れたそうだ。もう5回もこの話をしてくるので本当に嬉しかったんだと思う。おっちゃんありがとう。」

「日本は強いです!大阪難波の献血施設は被災地の方の為に超満員の順番待ちでした。私欲の無い列を初めて見ました。感動しました。被災地の方々、全国でその辛さを受け止めます。諦めずに頑張って下さい!」

「近所のスーパー・サミットに来てみたら、通常深夜1時まで営業なのに大きい看板が付いていなかった。早めに店を閉めたのかと思ったら、外の電気だけ消して節電しつつ営業していた。ちょっと感動」

「バイトくんの中に、東北が実家の子がいたらしく。弟「今日はバイト休んでいいよって伝えてくれる?」従業員「わかりました(電話で)あ、今日、店休みだってさ」......彼の伝え方に感動した。気遣いって、こういうことだ。」

「バイト先に若いお兄さんたちが軍団でお酒を買いに来たんだけど、その中の一人が「やべえ、オレお酒のためにしかお金持ってきてないから募金できん。ちょっとこれ買うのやめるわ」って言って商品返品してそのお金全部募金してた。お友達も続々と募金しててすごい感動した。 すごいよ」

「今日、募金箱に金髪にピアスの若い兄ちゃんが万札数枚入れていた。そしてその友人に「ゲームなんていつでも買えるからな」と言っていたのが聞こえて私含め周りの人達も募金していた。人は見た目じゃないことを実感した。そんなお昼でした。 この話感動しました。」

「僕も秋葉からの帰りにおにぎりとみそ汁配ってる方に会いました、感動しました、チャリだったからダイジョブです他の人にって言ったけどもらっておけばよかったなぁ絶対うまかったと思う」

「すごい。弟たった今ディズニーランドから帰宅したんだけど。新品のお菓子袋いっぱいにもらってきて、客全員分の帰りの交通費負担してくれたんだって。一晩中、何か言えば全て対応してくれたって。やっぱり世界のディズニーランドなんだね。」

「昨日青葉台駅で帰宅困難者が溢れる中、車に乗ってる人が「○○方面の方どうぞ!」って行って車に乗せてた。「困った時はみんな一緒ですから!」って言ってた。超感動したの思い出した。」

「避難所にいたときに、社会人1年生で、研修でこっちにきてた女の子が、たまたま携帯のバッテリーも持参してたらしく、体育館のコンセントを使用する許可ももらい、「携帯の充電をされたい方は、ご自由につかってください」と呼びかけて回ってたんだ。僕はその子にとても感動したんだよ・・・」

ツイッターを利用されていない方たちにも伝えたくて、
無断転載させていただきました。
ご了承ください。


三浦誠一













アテのない世界

パチンコは本人の努力次第でいくらでも上手くなるゲームだ。
そしてアテがなく、
常に台への不安につきまとわれるという意味では
やはりギャンブルである。

琴似の2.1円交換のパチンコ屋をねぐらにしていた。
もう七年くらい前の話。
ねぐらというのは、
パチプロが
主戦場にしている店のこと。
ぼくは働きながら打っていたので、
半プロと呼ばれる人種だった。

半プロといってもやることは専業の連中と同じなので、
店からは疎まれるし、
常連からは差別されるし、
プロからはいじめられるし、
常によそ者扱いである。

プロはプロ同士で、
符丁のような単語を使って
情報交換を行っている。
新しい店の釘の開きだったり、
海物語という台のネカセを変える方法だったり、
羽根物の攻略法だったりを、
仲間同士でやりとりして、
立ち回りに役立てるのだ。
羨ましかった。
ぼくも情報が欲しかった。
パチンコのシノギは常に流動的なものである。
今日本命の台が明日も打てるとは限らない。
アテのない世界だ。

どんなに回る台を見つけても
閉店後に釘を1本しめられたら終わりである。
他を探すしかない
その時
よそ者はみじめである。
誰も助けてくれない。
目ぼしい台はツワモノたちにすでに押さえられ、
残ったクズの中から、
勝ち線ぎりぎりの台を見つけて、
どんより打つしかない。

打てる台のストックの多い者が勝者となる世界だ。
一店でも多く、
一台でも多く、
把握している者の勝ちなのである。
プロ同士でよく見かける光景が、
台の貸し借りである。
他店から遠征してきたアテのない者に、
自分のストックの中から台を紹介してあげるのだ。
いわば自分の台を抱かせてやるのである。
なかなかな、やくざな風味だ。
抱かせてもらったほうの恐縮の仕方が半端じゃない。
ずっと敬語で低姿勢である。

そうしてつながりを作っておけば、
店を移らざるを得なくなった時の保険になる。

自然とそんな風にやくざな人間関係を構築しているのが、
日本人らしいと感じたし、
憧れてもいた。

でもそんな濃密な人間関係を結ぶのが嫌で、
現実逃避の入り口として、
パチンコを選んだのだ。
だから
誰とも口をきかなかった
いけすかない野郎だとみんなに思われていた。

本命の釘が閉まっているときは
打たずに店を出て
琴似を徘徊した
ひたすら歩き回って
時間をつぶした
「今日打たないでおけば明日は釘が開くかもしれない」
そう願いながら
歩くよりほかに
ぼくには
アテがなかった




ひよし







どきどきキャンプの中山美穂

中山美穂と、
どきどきキャンプの岸学(ジャック・バウアー)

土屋アンナと、
ブラックマヨネーズの小杉竜一

稲垣吾郎と、
評論家の宮崎哲弥

が、ぼくの目には同類に見える

稲垣・宮崎組は
鼻から下の出来具合と
その喋り方から、
それなりの賛同を得られると思うのだが
中山・岸組は、
誰からも賛同を得られずにいる

なぜだ
そっくりなのに
顔の中にある
基本構造が一緒ではないか
このまま中山美穂が老いて太って
岸学と同じ体型になったら
ぼくの主張している点が分かってもらえると思う
そうなってくれないかな中山さん
辻仁成に呆れて暴飲暴食して
自説の正しさを証明して欲しい

土屋・小杉組は、
鼻の穴と目の位置関係がそっくりだ
似顔絵を描いたら
デフォルメするポイントが重なる
つまり
同類ということだ

ちなみにぼくは
本当はSTINGに似ているはずなのだが
どういうわけか
他人の目には
違うものに見えるらしい
残念である


ひよし


番長、現る

ものすごく長い話を書いていたら
途中でブラウザの具合が悪くなったみたいだ
全部消えてしまった
ショック
書き直すことを断念したので
短い話をひとつ

中学三年のとき
番長が教室に入ってきて
「牧野ってどいつだ?」
とえらい剣幕で人探しをしている。
牧野という姓は学年にぼくしかいないので、
これはもしやぼくのことではあるまいかと、
慎重に慎重を重ねて、
間違いがないように、
何度もその問いを吟味していると、
クラス中の指がぼくを指し示していたので、
観念して顔を上げた。
番長は「おまえが牧野か」と怒鳴り、
ぼくのことを舐めるように視線を上下させた。
ぼくは男らしく声を震わせて、
クールに、
消え入りそうな声で、
「は、はい」と普段よりやや高目の声をだした。
番長はぼくの男らしさにびびっていた。
「本当におまえか」と訊く。
ぼくはそこで渾身の力を込めて、頷いた。
すると番長は、
「けっ、なら、いい」といって教室を出て行った。
ぼくは余裕の涙を目に浮かべて、
番長との壮絶なバトルに勝利した余韻に浸っていた。

後で番長の側近の女子が来て、
番長の惚れている女子の口から、
好きな男子としてぼくの名前が挙がったことを教えられた。
それが番長の闘争本能に火をつけ、
牧野と言う名の猛者を一目見ようと乗り込んできた、
らしい。
ガセだったらしいけどね。



ひよし







付き添いのススメ

先日
歩道に人が倒れていたので
付き添ってみた

救急車を呼ぶという重要な役はすでに他の人に獲られていた
しかたなく
四番目に現れた親切な通行人として座に加わることにする
他にすることもなく
暇なので
人が通るたびに
さりげなく視線を外すという技を披露した
これは
あまりに親切なぼくの姿に
彼らが心を痛めないように
目を合わせないであげるという
スーパー親切な技だ
ぼくは実にさりげなく彼らから視線を外してやり
不人情な通行人を胸の痛みから救ってやったのだ

道に倒れているのはいい年のおっさんで
その汚いなりから察するに
浮浪者のようである
おっさんはぐっすりと眠り込んでいるようで
時折
いびきのようなものも聞こえる
いびき=脳梗塞
という医学的ひらめきがきらりと光ったので
早速
みんなの前で発表して
感心されてしまおうと思ったら
「もしかしたら脳梗塞じゃない?」
カップルの女に先に言われてしまった
ふん、それぐらいのことは、
誰にでも分かるんだよ
という顔で夜空を見つめていたらサイレンの音が近づいてくる
救急車の登場である

みんな到着にほっとしたのか
五人ほどいたチーム親切は解散し、
次々と去っていった
残ったのはぼくだけである
サイレンの音を聞くとおっさんはガバッと起き上がり、
辺りをきょろきょろし、
ろれつの回らない口で独り言をいった。
持ち物を検査してみると、
近所のメンタルクリニックに通院していることが分かった。
救急隊員はおっさんに話しかけるが
会話にならない
そこでぼくはさっと二人の間に割って入り
そこまでの経緯をすらすらと説明した
「なるほどそうですか」
加えて
いびきをかいていたので、
もしかしたら脳梗塞の可能性も疑ったほうがよい、
という眼のさめるような医学的判断も伝えた。

感心する隊員をあとに立ち去ろうとすると、
こう声をかけられた
「あのう。もしやお医者さんでは?」
ぼくはそれには答えず歩き去った
愚問だ
人助けに医者も失業予定者もない
当たり前の事をしただけなんだ
というメッセージを
隊員に向けて背中から発射した

付き添ってよかったな
と思った。



ひよし








認める話

中学生のとき
海でキャンプファイヤーをした

お酒が入り
ぼくらはげらげら笑いながら、
そのへんにあるものを火にくべた
薪がなくなり
ダンボール箱や
割り箸や
紙皿や
紙コップや
紙くずを燃やしてしまうと
誰かが
どこかから
古いリヤカーを持ってきて
火にくべた
それはごうごうと音を立てて燃え上がり、
ぼくらはその炎の大きさに
げらげらと笑った。
すると地元の青年団の人達がぐるりとぼくらを囲み、
「誰がリヤカーを盗んだんだ」といって、
犯人探しを始めた。
一列に並べさせられて、
端から「お前か?」と一人ずつ質問された。
ぼくの隣にいる奴が犯人だったのだが、
ぼくが「ぼくじゃない」と答えると、
大きな拳骨で頭を殴られた。
嘘つきだと思われたらしい。
そして次に真犯人が「ぼくです」と答えると、
「おまえは正直で偉い、他の奴も見習え」
といって隣にいるぼくの頭をまた殴った。
くらくらした。

八百長を認めた奴には
「おまえは偉い、他の奴も見習え」と褒めてやり、
許すべきではないか。
悪いことをしたと認めるのは、
幾つになっても難しいことだ。
大人になったらますます難度が上がると思う。
まずは親方から、お手本を、どうでしょうか?




日吉






新年

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
お正月にまつわるエピソードをひとつ。

ラジオから除夜の鐘が鳴っていた。
薄暗い部屋で、
ぼくは一人机に向かっていた。
十三歳だった。
はたから見れば
ぼくの後姿は
勉学にいそしむ感心な中学生に映るだろう。
デスクライトの明かりの中で、
かりかりと書き込む音だけが響いていた。
もしそのとき背後から誰かに覗き込まれたら
その後のぼくの人生はいまとは随分違っているはずだ。
ドアノブに改造を加え、
絶対外からは開けられないようにしていたが、
それにはそれだけの理由と必然がある。
ぼくはモンキーパンチ作「ルパン三世」のコミックスの五巻を机の上に広げて、
ピンクの蛍光ペンを使って、
登場人物である「峰不二子」の乳首の先に、
着色していたのである。
ぼくの目は血走り、
呼吸は乱れ、
額には汗が浮かんでいた。
罪悪感と突破感と開放感と征服感と幸福感が混在し、
頭の中は、ぼーっとしていた。
ペンを握る手だけが意思をもったように仕事を片付けていく。
マークシートをチェックするように、
乳首を見つけ次第、
きっちりとピンクに塗り上げていく。

一冊分の乳首をすべてピンクに塗り終えると、
ぐったりと疲れていた。

完成した作品を手に取り、
ページをめくる瞬間、
いままで味わったことのない新しい興奮を覚えたが、
時間が経つにつれ、
急速に醒めていった。

ぼくは「峰不二子」を陵辱した罪悪感に襲われた。
沈んだ目でコミックスを眺めた。
捨ててしまいたい気持ちと、
もったいない気持ちが沸き起こり、
せめぎあっていた。
ぼくは立ち上がるとカーテンを開けて、
窓の外を眺めた。

新しい年は犯罪者の顔つきと共に幕を開けた。



日吉





つまらない奴

小学生のときは
一生懸命嘘をついた
「つまらない奴だ」と言われたくなくて
話を盛り
脚色し
起承転結をつけて
いかにも
毎日楽しく生活している「おれ」を装っていた
そうして
本性がばれないようにしていた

今思えば
そう感じていたのは僕だけじゃなかっただろう
クラス全員とは言わないが
半分
もしくは
1割くらいは
いかにもつまらない自分の人生を
額面どおりに評価されてしまうのが嫌で
わざと
楽しそうに振舞っていたはずだ

そうして周りに与える印象ばかりを気にしているうちに
僕の発した言葉は
僕そのものへと形を変えて
クラスの中に存在するのだ

内緒の戦略が浸透しきった頃
「ひよしくん性格変わったね」
と一人の女子に言われた

その子はつまらない僕のことを
「面白い」といってくれた子だった

僕はとぼけて聞き流した

その子が怖かった

その子は前の僕を覚えていた
僕の消去したくてしょうがなかったものを

もうクラスのみんなには見えなくなったものを
彼女は覚えていた

それきり口をきかなくなって
彼女は転校した

名前も顔も思い出せないけれど
そう言われた時の
彼女の声の震えだけを
今でも覚えている


日吉








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